コラム「言葉の教育、大切にしていますか?(後編)」|幼児教室探しの『幼児教室どっとこむ』

−言葉の教育、大切にしていますか?(後編)−

先日、歯科医の友人から、大変興味深い話を聞きました。
子どもの歯の治療をする時、彼女は必ず「子ども本人の口」から、症状を聞くようにしている、というのです。今の母親達は、教育への意識の高そうなご家庭であればあるほど、親が前面に出てきます。
子どもの歯科受診の場合も例外ではなく、ほとんど母親が、子どもの症状をまるで我がことのように話されるそうです。

しかし、彼女が言うには、恐怖感を上手く取り除いた後、患者である子どもと、ドクターである彼女と一対一になって、真剣に話せば、2歳は2歳なりに、3歳は3歳なりに、一生懸命に「○○で痛い」「○○に気持ち悪い」のように伝えようとする、と言うのです。私はこの話を聞いて、あらためて、子ども自身が身につけている「言葉への意欲」を実感しました。そう、子どもは、ちゃんと、年齢に応じて、自分で話そう、話したいという意志、意欲を、確かに持っているのです。

子どものものとして身についている語彙や話し方の用例は、多ければ多いほうが、話せる内容は豊かになります。
現在、私は年少児のクラスでは、よく様々なものの名称をたずねます。「くるま」ひとつとっても、「タクシー」「トラック」「ダンプカー」など、たくさん知っているほうが、いろいろなお話ができますね。「おはな」だってすべて「お花」で済ませてしまうよりも、「バラ」「カーネーション」「きく」「チューリップ」というふうに、きちんと区別して教えてみます。
もちろん、この時には、お花の名称を教えるということだけがポイントではなく、たとえば「赤くて小さいお花」や「公園に咲いていたお花」というような表現でもいいのです。いずれにしても、名詞としての語彙だけではなく、豊かな表現、正確な表現をするためには、たくさんの「言葉」が必要であり、多くの言葉を使いこなせればこなせるほど、表現が豊かになり、ひいては人間性の幅が出てくるものです。

また、子どもが幼い頃から、生活の中の必需品として使う言葉「コップ」という単語も、たった一つの「コップ」という言葉で済ませてしまうよりも、「お湯のみ」「グラス」「マグ」と、それぞれの違いを教えてあげて、生活の中で自然に使い分けていれば、そこから「お茶」の話や「コーヒーや紅茶」、パパが飲む「ビールやワイン」などにも話は発展し、知識も増えていきます。グラスとお湯のみ、という単語を使いわけられることで、温かい飲み物や冷たい飲み物についても理解できるでしょう。
このように、決して単語は「ひとつの単語」としてだけではなく、さまざまなものに発展、展開し、子どもの頭の中でつながっていくものなのです。残念ながら、英語の単語を一つ覚えたからと言って、なかなか、こういうふうに生活の中で有効なものとして展開していくことはなく、あくまで「英単語」として、記憶されるに留まります。
なぜでしょうか?
それは、日頃使っている言葉こそが、自分の生活に密着した文化だからなのです。

私は、大学卒業直後から今の仕事にはいるまで、子どもに英会話を教える仕事に携わり、同時に海外での子どもの教育プログラムに関わっていました。そういう経験からも、子どもの英語教育、外国語教育の必要性を、誰よりも強く感じている一人です。
しかし、そういう強い思いを持ちながらも、それでもなお、まずは「母国語の習得」の重要性を痛感し、今の子ども達の言葉の発達の未熟さを危惧しています。
言葉は「文化」そのものです。おはようございます、ありがとうございます、と声をかけながら、頭を下げるひとつの文化。「おかげさまで」「おそれいります」などの謙虚な姿勢。これらは日本の特徴的な文化であり、すべて言葉を媒体として、子どもの中に育っていくべき大切なものです。

21世紀。いろいろなものが様変わりする中、小学校受験の世界でも、「言語」や「季節」の問題は、未だによく出題される問題です。なぜなら、きっとそれは、どんなに時代が変わっても、人が意識して守り、次の時代を担う子ども達に教え、伝えていくべき日本人社会の中の重要な要素として認識されているから、ということに他なりません。
これからの時代を生きる子ども達のために、国際人としての外国語教育の必要性を意識する教養あるお父様、お母様であるならば、どうぞまずは日本人としてのアイデンティティーを大切にし、立派な国際人であるために、母国語、母国の文化を大切にする家庭教育の重要性を、是非ご理解ください。

幼児教室マナーズ
南坊 まどか先生

 → 言葉の教育、大切にしていますか?(前編)

ご意見、ご感想をinfo@youkyou.comまでお寄せ下さい。※必ずどの先生宛かを明記して下さい!

pagetop