コラム「優しさ溢れる魅力的な子ども(前編)」|幼児教室探しの『幼児教室どっとこむ』

−優しさ溢れる魅力的な子ども(前編)−

この16年間、私はたくさんの子ども達と接すると同時に、本当にたくさんのご両親を見てまいりました。子どもが10人いれば、個性いろいろ。まさに、十人十色です。
しかし、両親をひと組で「1」として数え、親子がペアになり、全部で20組が集まったとしても、決して20組二十色にはならないものです。

なぜなら、両親と子どもは、表面上、どんなに似ていないように見える親子でも、その実、親子で「一色」だから、なんですね。お子様がクラスに通い始めて、ほんのひと月。ご両親とも、わずかの時間の立ち話や数通の短いメールのやりとり…をしただけでも、案外、簡単にその「家庭の中」は見えてきます。何気なく交わす子どもとの会話。その時の、子どもの言葉遣いや立ち居振る舞いは、まさにその子が育ってきた家庭の中で、4年、5年という歳月をかけて培われてきたもの。両親のリードのもと、子どもが自然に、その家庭の中で「個性の一つ」として育んできたものでしょう。ですから、どんなに表面上は似ていないと感じる親子でも、実際には、本当によく似ているものですよ。

ご両親が「うちの子は理解しにくい子でねえ。僕たちには似ていないんですよ…」と、真顔でお話しになっても、客観的に、冷静にその親子を見ていると、たとえ子どもが幼くても、やっぱり「根っこのところ」ではそっくりなのです。なるほどねえ…と、苦笑しながら。 そういう事実をご理解いただいた上でお読み下さいね。

「優しい子に育って欲しい」「人の痛みのわかる子に育って欲しい」これは、多くのご両親が、決まり文句のようにおっしゃる言葉です。みなさん、本心でそう思っていらっしゃるのですね。そして、そのフレーズは、出願時の願書の中にも、頻繁に登場します。「心優しくて、人の痛みのわかる子に育って欲しいと思っております。」そんな子に育ってくれれば、どんなにステキでしょう。
けれど、決して皮肉でも、嫌みでもなく。こういうふうに活字で書けば簡単ですが、本当に優しくて、人の痛みのわかる子に育ってもらうためには、どのように親がリードしていけば良いのでしょう?そういう素晴らしい子どもに育てるための家庭教育とは、どういうものでしょうか?むー… と唸り、頭を抱えてしまうほど難題だと思われるかもしれませんが。じつは、思いのほか、その答えは簡単です!
一番の近道は、最も子どもにとって身近な存在であるご両親自身が、「優しくて、人の痛みのわかる人」であれば良いのです。これは、どんな高名な先生が書かれた子育て方法を試みるよりも、最も強力なリードとなるでしょう。

ここで、優しさの定義とは?などと考え始めると、ひたすらつまらない読み物になってしまいそうなので、もっと身近な例を使ってお話しを進めていきましょう。夕方の慌ただしい時間に、子どもはよく「ねえ、ママ、あのね、今日ボク幼稚園でね…」などと、キッチンに入ってきたりはしませんか?そうです、決まってママが忙しく、気ぜわしく何かをしているような時に… そんなタイミングで、なぜかふらっと側にやってきて、話し出します。たいていこんな場合、ママ達は思うのですよね。
「もう、この子ったら、なんで今なわけ?さっき、幼稚園のお迎えの時、今日は何があったの?何したの?って、ニコニコ顔で聞いたじゃない。あの時には、全然何も話そうとしなかったくせに、こんな忙しい時間になって、何なの… ほんとに、ちっとも人のこと、考えてないんだから…」でもママは、さすがにわざわざ話しかけてくれた息子や娘を邪険にするのも… と判断し、ママはやんわりと拒否します。「○○ちゃーん、ママね、今ちょっと忙しいの。ねっ、今日はあなたの○○のおけいこに付いて行ったから、いつもより夕飯の支度が遅くなって、大変なのよ。だから、あとでね。先にご飯の支度をしちゃうから!…っで、あとで聞かせてね!」子どもは、仕方ないなあ、という顔をして、ちょっぴりつまらなさそうにリビングに引き返していきます。

私は何も、この時点で、夕食の支度の手を止めて、子どもの話を聞いてあげるべき、などと言うつもりは毛頭ありません。昔の乳母、お世話係や、ベビーシッターさんでない限り、そんな悠長なことをしていては、さまざまな家事が滞っていくでしょう。
それに、毎回、子どもにとってのタイムリーな瞬間に、敢えて大人が子どもを優先し、耳を傾け続けたとしたら… きっとその家の子どもは、「待てない」「我慢できない」子どもに育ち、まわりの状況に対して目を配れない、自分勝手な癇癪持ちの子どもに育ってしまうでしょう。

いつも子ども中心に回っている家庭の子ども達は、知らず知らずのうちに「自分は偉い」「自分が中心」のような意識を持ってしまいます。ですから、自分が未だ超未熟な子どもである、という正しい認識が希薄なんですね。つまり、私がよく、いろいろなところに書いている「王子様、王女様的子ども」です。こういう子ども達は、親や先生等が、多忙な社会人、大人である、という認識がありません。ですから、このような場合でも、わざわざ家事やお料理の手を止めて、「なあに?」などと応対してあげる必要はないですよね。当然、「あとでね!」というお母様のリアクションが、一番真っ当な親の判断でしょう。

ところが。とても残念なことに、ほとんどの場合、ママ達は約束したこの「あとでね」を実行しません。夕食が終わったら、今度はお台所の後片づけで忙しいと言い、片づけが終わったら、さあさあさっさとお風呂に入る時間よ、と言い… なかなか、「あとでね!」の「あと」がやってきません。
そして、かわいそうな子どもは、寝る時間だとせき立てられ、話したかったことを話すことなく… 聞いてもらうことなく… 寝てしまいます。

そして残酷なことに、ほとんどのママは、我が子と「あとでね!」の約束をしたことさえも覚えていなかったりするのです。我が子が、どんなに「あとでね!」を楽しみにしていたかを考えることもなく、どんなにママの反応を期待していたかも想像することもなく…そしてもし、「あっ、あの子の話しを聞いてやらなかった!」と気づいたとしても、自分に都合の良いように、「どうせ、あの子、もうそんなことは覚えてないわ、子どもなんだもん!」などと思うことが多い…。
でも… 本当にママに話したい!と思ったことだったとしたら??? ママはあとでって言ったのに、聞いてくれなかったよ… ママは、誰よりもたくさんの「うそ」をつく人だ… と、幼い我が子はボンヤリと思っているかもしれませんよ。
   … つづく

幼児教室マナーズ
南坊 まどか先生

 → 優しさ溢れる魅力的な子ども(後編)

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