コラム「子どもに考えさせること・それを待つこと・見守ること(前編)」|幼児教室探しの『幼児教室どっとこむ』

−子どもに考えさせること・それを待つこと・見守ること(前編)−

ある日の教室での様子。1歳半からの幼児がお母さんと一緒に参加しています。このクラスは、子どもの為というよりお母さんの為のクラスです。幼児はどのようにして能力を獲得していくのか、その時の心理状態はどのようであるか、その活動にお母さんはどう力を貸していくのが良いのか、といったことを学んでもらうためのクラスです。

様々な器具がフロアーに出ています。すべり台あり、お山あり、トンネルありで、一応道順は作ってありますが、この時期の幼児は勝手気ままに一番興味のあるところへ走って行きます。すべり台も、すべりたい子、登りたい子と色々です。お母さんには、適切な声かけと危険回避が求められます。入会して間もないお母さんは、子ども共々なかなか様子がつかめないようです。こちらが提示したことを片っ端から、全て子どもにさせようとします。させようとする割には、幼児自身に達成感を味あわせることができず、引っ張り上げたり押さえつけたり、形ばかり出来ていればOKといった風です。もちろん私達は、どんな時に危険回避が必要か、手を貸すにしても子どもの行動を抑制しないためにはどのように補助をするか等、その場その場でお話しをします。

お母さん達が少し慣れてきて、一歩下がって子どもの活動を見守ることが出来るようになったある日、女の子2人が上と下から同時にすべり台に挑戦を始めました。当然中程で2人は立ち往生します。しばし見つめ合い、次にどうするのかと思ったとたん、「ごめんごめん、○○ちゃん下からはいけないの。順番でしょ。どいてあげなさい。」の言葉と共に、下から登って来た女の子はお母さんの手で降ろされそうになりました。「ちょっと待って、もう少し見ていましょう」あわてて止める私、お母さんは怪訝な顔で、でも言われるままに手を引っ込めました。女の子達はまだしばらくじっと見守っていましたが、やがて下からのこの方が脇へよけながら登りはじめ、上から降りてきた子は座ったまま反対側に身を寄せました。そして間もなく2人はすれ違い、何事もなく又活動が始まりました。子ども達は見つめ合っている間、どうすればいいか考えていたに違いありません。今までこんな狭い場所で、人に道をゆずる経験をしたことは無かったと思います。だから初めて考えているのです。別に相手に対して悪意を持ってはいないでしょうから、相手がどくべきだ、とも思っていないでしょう。どうすれば自分は前に進めるかを考えているのです。そして阿吽の呼吸ですれ違いに成功しました。

この場合、もしお母さんが子どもを降ろしてしまったら、どうだったでしょう。降ろされた子どもは、何で降ろされたか理解できたでしょうか。『順番』という呪文の言葉をお母さんが唱えると、とにかく今自分のやっている事は中断されるという意識は持つと思いますが、それ以上の理解はどうでしょうか。何が公平で、何が不正か、2才に満たない子どもは理解するはずがありません。中には、そうやっている内に習慣がついて順番を守るんじゃないの?という方もいらっしゃるかもしれません。でもそれは、盲従するということですよ。少なくとも、どうして順番を守らないといけないかは、順番を守らなかった時に何が起こるかを味わってからでないとわかりません。   …つづく

−子どもに考えさせること・それを待つこと・見守ること(後編)−はこちら

幼児教室 パルクリエイション
代表 高崎 利子先生

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